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A悪意の遺棄

A悪意の遺棄に関して、以下項目を解説しています。
・悪意の遺棄とは?
・最高裁判例の裁判要旨
・悪意の遺棄の要件
・裁判で認められるか否か

悪意の遺棄とは?

”悪意の遺棄”とは、正当な事由なく夫婦の一方が民法752条の同居・協力・扶助の義務を放棄し果たさないことを意味します。

最高裁判例の裁判要旨

”悪意の遺棄”が争われた最高裁判例の裁判要旨は、以下の通りです。
【最高裁判例(昭和39年9月17日)裁判要旨】
妻が婚姻関係の破綻について主たる責任を負い、夫からの扶助を受けないようになつたのもみずからの原因によるなど原判決認定の事情のもとにおいては、夫が妻と同居を拒み、これを扶助しないといても、民法第770条第1項第2号にいう悪意の遺棄に当らないというべきである。
《解説》
本件では、夫が同居・扶助の義務を怠る場合でも、正当な事由がある場合は、”悪意の遺棄”には当たらないとしています。

悪意の遺棄の要件

”悪意の遺棄”とは、同居・協力・扶助の義務を放棄し果たさないことですが、同居・協力義務違反のみで遺棄とは判断されず、通常は扶助義務を履行しないことが遺棄の客観的判断の要素となるようです。
ただし、同居・協力関係が不十分で婚姻関係が破綻しているとして、民法第770条第1項第5号(婚姻を継続し難い重大な事由)に認定され、離婚が認められることがあります。

裁判で認められるか否か

上記項目「悪意の遺棄の要件」に基づき、裁判で悪意の遺棄が認められるか否かについては、以下の通りとなります。
備考)
同居義務違反及び協力義務違反の場合は、民法第770条第1項第5号(婚姻を継続し難い重大な事由)として認定される場合があります。

同居義務違反

【裁判で認められる可能性が高い場合】
・家族を無視し、別に住居を借りて出ていった場合
【裁判官の心証による場合】
・勝手に実家に帰ったきり戻ってこない
【裁判で認められる可能性が低い場合】
・仕事の関係や配偶者の暴力など、正当な事由による別居

協力義務違反

【裁判官の心証による場合】
・専業主婦なのに家事をまったくしない
・家族のことを顧みずに遊び歩いている
【裁判で認められる可能性が低い場合】
・仕事や病気などの正当な理由がある

扶助義務違反

【裁判で認められる可能性が高い場合】
・生活が困窮しているのに生活費を渡さない
【裁判で認められる可能性が低い場合】
・失業中や病気などの正当な理由がある

 
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